建設工事の請負契約を締結する際、受注者と注文者それぞれ守らなければならない義務があります。
受注者の義務
① 見積書の作成と提示
建設工事の請負契約を締結する際には、工事内容に応じて、工事の種類ごとに材料費・労務費その他経費の内訳を明らかにして見積りを行うよう、努力義務が定められています。
また、注文者から請求があったときには、契約成立前に見積書を提示しなければなりません。
② 前金払の際の保証
前金払をするときに、注文者から保証人の請求があれば、受注者は、500万円未満の軽微な工事を除き、金銭保証人又は工事完成保証人を立てたり、東日本建設業保証(株)のような、前払金保証会社による前金払いの保証を受けたりする必要があります。
③ 現場代理人の選定
受注者が、工事現場に現場代理人を置くときは、その現場代理人の権限、注文者の現場代理人の行為について注文者に意見を申し出る方法を書面により通知しなければなりません。
注文者の義務
① 不当に低い請負代金の禁止
注文者が、取引上の地位を不当に利用し、通常必要な工事原価に満たない額で請け負わせてはなりません。
また、受注者が従業員の法定福利費などを含む必要経費を適正に考慮して作成した工事代金の見積額に対して、注文者が、その法定福利費相当額などを含まない金額で建設工事の請負契約を締結させることは、「不当に低い請負代金」となるおそれがあります。
② 不当な使用資材などの購入強制の禁止
注文者が、請負契約の締結後にその取引上の地位を不当に利用して、受注者が使用する資材・機械器具などやその購入先を指定して、受注者の利益を害することも禁止されています。
③ 見積期間の設定
注文者は、入札や随意契約の前に、工事内容、工期などをできるだけ具体的に示して、一定の見積期間を設けなければなりません。
見積期間は、工事の予定金額により次のように定められております。
a. 予定金額が500万円未満 … 中1日以上
b. 予定金額が500万円以上5,000万円未満 … 中10日以上
c. 予定金額が5,000万円以上 … 中15日以上
※やむを得ない事情があるときは、bについては中5日、cについては中10日に短縮できます。